第137章 千里の道も一歩から<弐>
「須磨。そんな顔をするんじゃない」
それに気づいたまきをが、語気を強めて言った。
「だって、だって。私より年下の女の子が、あんな・・・、あんな・・・」
須磨の目にはうっすらと涙がたまっていた。
「須磨。お前の気持ちはわかる。だが、真実を告げてそれをどう受け入れるかはあいつが決めることだ。お前が心配することじゃない」
そう言う宇髄の顔は、柱だったころと変わらない威厳に満ちていた。
「そうだよ。それに、あたしらだって見たじゃないか。あの子の底力。それに、あの子は一人じゃない。たくさんの仲間がいる。きっと大丈夫だよ」
「ううっ・・・」
鼻水を啜る須磨に、まきをはそう言った。
「さて、あたしらは皆の食事の支度をしないとねぇ。みんなくたくたになって帰ってくるだろうし。ほらいくよ!」
まきをは須磨を引きずってその場を去り、宇髄はそんな二人を見て柔らかくほほ笑んだ。
「天元様、お待たせいたしました」
宇髄が振り返ると、そこにはさらしを巻いた洋袴姿の汐が立っていた。
引き締まった体格に、しっかりとついた筋肉。そして見事に割れた腹筋に皆の視線はくぎ付けになった。
「ちょっと、人の身体を何じろじろと見てるのよ。厭らしいわね」
「馬鹿言うな。誰がお前みたいなちんちくりんに興味持つかよ」
「・・・やっぱり男として再起不能にしておけばよかったわ」
汐は宇髄をじろりとにらみ、それを見た雛鶴は「流石に配慮が足りません、天元様」と彼を窘めた。