第136章 千里の道も一歩から<壱>
「あ、義勇さん。具合は大丈夫ですか?」
「ああ」
「ちょっと炭治郎。そんなことよりこの鈍感柱何とかしてよ!」
「ええっ!?何があったんだ?」
炭治郎が加わり、三人の間に奇妙で騒がしい時間が生まれ、義勇は困惑した。
しかし不思議と、不快には思わなかった。
そんな義勇の胸に、その時には気づかなかったある思いが生まれた。
――この二人は、決して死なせてはならない。守らなくてはならない。
それが、今自分にできる為すべきことだと。
義勇が元気になったころ、炭治郎は改めてざるそば早食い競争を提案し、汐と義勇は困惑したものの受け入れた。
結果は、汐が二人に圧倒的な差をつけ完勝。義勇に稽古をつけてもらうことを約束させた。
「あ、そうだわ。あたし明日から復帰だから、早めに帰って準備しないと」
蝶屋敷に向かう途中に、汐は唐突に口を開いた。
「そうなのか。俺はあと5日はかかるみたいだから、頑張って待つよ」
「頑張って待つって意味わかんないけれど、まあいいか。じゃあね、二人共。後義勇さん。もう二度と柱じゃないとか居場所はないとかいうんじゃないわよ!もし口にしたら・・・、性転換させるからね」
汐は拳を握りしめながらにっこりと笑った。その瞬間、義勇と炭治郎はこれ以上ない程の怖気を感じた。
(最近の女は、これほどまでに怖ろしいのか・・・)
時代は変わるものだなと、義勇はしみじみ思うのだった。