第136章 千里の道も一歩から<壱>
眩暈を起こした義勇を連れて、汐と炭治郎は休めるところを探した。
運よく空いている茶屋がみつかり、休憩がてら皆で休むことした。
「ごめん、本当に、ごめんなさい」
義勇に濡れた手ぬぐいを手渡しながら、汐は心から申し訳なさそうに謝った。
「いや・・・」
義勇は腫れた頬を冷やしながら、汐から目を逸らしていた。
「善逸や伊之助を殴った時もよく気絶してたけれど、まさか柱のあんたまでそうなるとは思わなかったわ」
「・・・、お前は普段からもこんなことをしてるのか?」
義勇の問いかけに汐は「まさか!こんなことは偶にしかやらないわよ!」と答えた。
義勇はため息をついて目を閉じた。頬の鈍い痛みが、手ぬぐいの冷たさに溶け込んでいく。
「あのね、義勇さん。あたし、あんたにちゃんと言っておきたいことがあるの」
汐は顔を逸らす義勇に向かって話しかけた。
「あたし、あんたに命を助けられて、鬼殺隊の事とかいろいろ教えてくれて本当に感謝しているの。あんたがいなければ、あたしはとっくにこの世にはいないし、おやっさんの事も救えなかった。それだけじゃない。あたしを炭治郎と禰豆子に会わせてくれた。前に進む希望をくれたのはあんたよ。だから、その、本当にありがとう」
汐の声は、義勇の耳を通り体の中に染みて行く。