第136章 千里の道も一歩から<壱>
(汐の言っていることは間違っているとは思わないけれど、義勇さんにとってはそうじゃなかったかもしれない。追い打ちをかけてしまったのかもしれない・・・)
このままでは義勇の心が折れてしまうかもしれないと感じた炭治郎は、必死に考えを巡らせた。
その結果、炭治郎の頭に一つの案が浮かんだ。
(そうだ。早食い勝負をするのはどうだろう?)
炭治郎は至ってまじめに考えた。
(勝負で俺か汐が勝ったら、元気を出して稽古しませんか?みたいな・・・。俺はまだ復帰許可おりてないから、手合わせ的なこと出来ないし。義勇さん、寡黙だけど早食いなら喋る必要ないし、名案だな!)
目を輝かせる炭治郎を見て、汐は炭治郎がまた何か突拍子もないことを考えているのを察した。
「炭治郎、大海原。遅れてしまったが、俺も稽古に「義勇さん、ざるそば早食い勝負、しませんか?」
義勇の言葉を遮って、炭治郎が提案した。
(なんで?)
(やっぱり)
義勇は疑問符を頭に張り付け、汐は相も変わらずおかしな提案をする炭治郎に頭を抱えた。
その時だった。
「え?」
義勇は突然、強烈な眩暈を感じて蹲った。頭が揺さぶられるような不快感が、段々と広がっていく
「えっ、ちょっ・・・?!」
「うわああああ!!義勇さーん!!」
呆然とする汐の顔と叫ぶ炭治郎の声が、ぼんやりと見え、そして聞こえた気がした。
「嘘、嘘!?あたし義勇さんやっちゃった!?本当にやっちゃった!?」
「言ってる場合じゃない!!とにかく、義勇さんを休ませよう!!手伝ってくれ!!」