第135章 為すべきこと<参>
「!?」
空気が斬り裂く鋭い音が響き、義勇の身体が僅かに傾く。
ぶたれた頬はみるみる赤く染まっていった。
その光景を見た炭治郎は、目が転び出る程剥きながら飛び上がった。
「馬っっっ鹿じゃないの!!??」
義勇の頬と同じくらいに左手を赤く染めた汐が叫んだ。
「さっきから黙って聞いてりゃ、自分は柱になっていい人間じゃない?鬼殺隊に居場所がない?ふざけるのもいい加減にしてよ!!」
汐はそのまま義勇の胸ぐらをつかんでまくし立てた。
「最終選別の結果に納得いかないのもわかる。自分を守った人間がいなくなる辛さもわかる。でも!!だからと言ってあんたが今までやってきた事がすべて無意味だと思ったら、大間違いよ!!」
義勇は汐の顔を見て目を見開いた。汐の目に、涙がたまっていた。
「あんたが自分をどう思っていようが、柱じゃないって思おうが好きにすればいい。考えるのは自由だから。だけどね。あたしも、炭治郎も禰豆子も、あんたに助けられた。あんたがいたからあたし達は、今こうしてここに存在していられるの!!あたしだけじゃない。今までだって、冨岡さんという人に命を救われた人間が、確かにいるの!!」
その言葉を聞いて、義勇の心に今まで出会った人たちの顔が蘇った。
「その想いを、あんたは無下にするの?あんたのことを心配してくれたお館様や、怪我を押してあんたを気にかけてくれている炭治郎の気持ちを、絆を、あんたはぞんざいに扱えるの!?答えろっ!!水柱・冨岡義勇!!!」
「止めろ汐!!やめるんだ!!」
炭治郎は慌てて汐を義勇から引きはがした。
汐は荒い息をつきながら、苦しそうに胸を抑えていた。