第135章 為すべきこと<参>
そんな汐を見て炭治郎の心に、いろいろなものが駆け巡った。
義勇の話を聞いて、炭治郎の脳裏に浮かんだのは煉獄の姿。自分たちを命がけで守ってくれた、誇り高き武人。
彼がいれば、無惨を倒せたのではないかと思った。彼ではなく、自分が死ねばよかったのではないかと思うこともあった。
けれど、伊之助が言った「信じると言われたなら、それに応えること以外考えるな」という言葉が、炭治郎をつなぎとめた。
そして、禰豆子や善逸、汐。たくさんの大切な人達に支えられ、繋げられて炭治郎は今生きている。
(俺がとやかく言えることじゃないかもしれない。だけど、汐は言った。自分の気持ちを。だから、俺も言わなくちゃ。俺の気持ちを)
炭治郎は汐から離れると、俯く義勇の目を見て言った。
「義勇さん。汐が無礼な真似をしてすみません。ましてや、この大事な時期にけがをさせてしまい、本当に申し訳なく思います」
炭治郎はそう言って深々と頭を下げた。汐は顔をしかめたまま、義勇から目を逸らすようにそっぽを向いた。
「ですが、俺は彼女の言ったことが間違いだとは思いません」
「えっ?」
炭治郎は凛とした声で言った。義勇は驚いたように顔を上げ、炭治郎の顔を見つめた。
「俺、うまく言えないですけれど、どうしても聞きたいことが一つあったんです。義勇さんは・・・」
――錆兔から託されたものを繋いでいかないんですか?
その瞬間、義勇の耳に乾いた音が聞こえてきた。