第135章 為すべきこと<参>
「あ、そう言えば思い出したんだけど。冨岡さんの羽織って、中々風変りよね?」
「ああ。羽織の柄が半分違うんだよな。伊之助が半々羽織っていうくらいだから」
「あたしの気のせいかもしれないんだけど、あの羽織の柄、何か見覚えあるような気がするのよねぇ・・・」
汐はぼんやりとした記憶をたどりながら、そう言った。
しかし頭の隅まで出かかっているのに思い出せない。そんなもどかしさを感じていた。
「そうなのか。実は俺もなんだよ。でも、どこで見たのか思い出せないんだ」
「何だ、そうだったの。不思議なこともあるものね」
そんな会話をしていると、大きな屋敷が段々と見えてきた。
「ここが冨岡さんの屋敷・・・」
初めて見る義勇の屋敷に、炭治郎は大きく目を見開いた。
「随分静かね。また留守かしら」
「いや、微かだけれど冨岡さんの匂いがするし、今は鬼が出ないから柱としての仕事はないはずだ」
炭治郎はそう言い切ると、閉ざされた扉に向かって声を張り上げた。
「ごめんくださーい!冨岡さーん!!」
炭治郎が呼んでみるものの返事はなく、聞こえるのは鳥の鳴く声だけだった。
しかし炭治郎はめげずに、もう一度声を張り上げた。
「こんにちは、すみませーん。義勇さーん、俺ですー。竈門炭治郎ですー」
だが、返ってくるのは静寂だけ。困ったように眉を寄せる炭治郎を見て、汐は我慢が出来なくなった。