第135章 為すべきこと<参>
時間は少しさかのぼり。
汐と炭治郎がもらった輝哉からの手紙には、二人の怪我の具合を心配する言葉から始まり、自分が病が進行して動けなくなってしまっていることがつづられていた。
その為、大切な時期に皆一丸となって頑張りたいと思うから、一人で後ろを向いてしまう義勇に話をしてほしいということだった。
汐はしのぶに炭治郎の外出許可を何とかもらい、二人は鴉に案内されながら義勇の屋敷を目指していた。
「大丈夫?少しでも辛くなったら言って」
「ありがとう汐。今のところは大丈夫だよ」
炭治郎は汐の優しさに顔をほころばせつつも、義勇の事を思うと胸が痛んだ。
「冨岡さんの噂をしていたら、まさかこんなことになるなんてね」
汐は輝哉の手紙を眺めながら、そう呟いた。
「でもお館様は、どうしてあたしにも手紙をよこしたのかしら?弟弟子の炭治郎はともかく」
「汐だって、呼吸は違うけれど鱗滝さんから学んだ妹弟子じゃないか。それに、汐も俺と同じ、冨岡さんに命を救われただろう?だから無関係じゃない」
炭治郎がそう言うと、汐は小さく息をついた。
汐の村が鬼の襲撃を受けた時、命を助けてくれた恩人。鬼となってしまった妹を殺さず、炭治郎の可能性を見出してくれた人、冨岡義勇。
彼がいなければ、汐も炭治郎も、この道に進んではいなかっただろう。
いや、この世にいなかったかもしれない。
「そういえば、あたしちゃんと冨岡さんにお礼を言っていないわ。みっちゃんと挨拶に行った時も留守だったし、手紙を送ってもちっとも返事をくれないし、何考えてるのかさっぱり分からない人なのよね、冨岡さんって。あたし、正直ああいう人って苦手」
「おいおい、それは流石に言いすぎだ。とにかく、冨岡さんに会ってきちんと話そう。その時に、きちんとお礼を言うんだぞ」
「・・・わかってるわよ」
炭治郎に諭された汐は、唇を尖らせた。