第135章 為すべきこと<参>
訓練を終えた汐は、炭治郎の顔を見ようと病室へ向かっていた。
すると
「自分よりも格上の人と手合わせしてもらえるって、上達の近道なんだぞ」
部屋の中から炭治郎の熱のこもった声が聞こえてきた。
「自分よりも強い人と対峙すると、それをグングン吸収して強くなれるんだから」
その声が炭治郎の飽くなき向上心を現していると感じて、汐も自然と笑顔になった。
だが
「そんな前向きなことを言うんであれば、お前と俺の中も今日これまでだな!!」
空気を震わすような善逸の怒声が、汐の耳を突き刺した。
「お前はいいだろうよ、まだ骨折治ってねぇから、ぬくぬくぬくぬく寝とけばいいんだからよ!!俺はもう、今から行かなきゃならねぇんだぞ!!分かるかこの気持ち!!」
「いたたたた!!」
炭治郎の悲鳴が聞こえたため、汐は慌てて部屋の中に飛び込んだ。そこには、炭治郎の額に激しく噛みつく善逸の姿があった。
「へー、そう。そんなに休みたいなら、休ませてあげましょうか?」
汐がそうささやくと、善逸の顔が一瞬で青く染まった。
昨日、汐に完膚なきまでに叩きのめされた恐怖が蘇ってきたのだろう。
よく見れば善逸の頭には、こぶの痕がまだ残っていた。
「こらこら汐。やたらめったらに怪我人を増やしちゃ駄目だ。アオイさんたちが大変だろう?」
「え、気にするところそこ?俺の心配はしてくれないの?」
炭治郎のズレた指摘に、善逸は冷ややかに突っ込んだ。