第135章 為すべきこと<参>
「ところで話は変わるんだけど、しおちゃん。あなたは"痣"って知ってる?」
「痣?」
汐が聞き返すと、蜜璃は神妙な面持ちで頷いた。
「上弦の鬼と戦った時、私の身体に痣が出ていたみたいなの。その時は無我夢中で分からなかったんだけれど、それが出るといつも以上にすごい力が出せるの」
「痣・・・。もしかして、無一郎や炭治郎の顔に出てたあれのこと?」
汐の言葉に、蜜璃は驚いたように目を見開いた。
「あたしも少しだけ遠目で見ただけだけれど、確かにすごい動きをしていた気がする。あれっていったい何なの?」
「原理はよくわからないけれど、身体の温度を三十九度以上にして、心拍数を二百以上にすると痣が出てすごい力が出せるの。でも、体質的に痣が出ない人もいるみたいで、そこはよくわからないわ」
「体温を三十九度・・・。たぶんあたしには無理ね。あたしの平熱は低いから、そんな体温だったら確実に死んでるわ」
汐は少し残念そうに答えた。
「・・・でも、しおちゃんはそれでいいのかもしれないわ」
蜜璃はそう小さく呟くと、汐に悟られないように笑った。
「さて、私はこれから準備をしなくちゃ。しおちゃんはしっかり回復訓練をして、万全の状態で稽古に挑むのよ」
「はーい」
蜜璃はそう言って蝶屋敷を後にした。