第134章 為すべきこと<壱>
「よかったわ。今ちょうどここにいい獲物があるの。研ぎたてて切れ味抜群の、素晴らしい獲物よ」
「汐・・・、お前、まさか・・・」
炭治郎の顔がこれ以上ない程真っ青に染まり、出てくる声も震えていた。
「今日という今日は絶対に許さない!!その皮と腸と××××綺麗に掻っ捌いて、干物にしてやるゴルァアアアア!!!」
汐は貰った懐剣を握りしめ、伊之助に向かって躍りかかろうとした。
それを後藤が羽交い絞めにし、何とか阻止した。
「落ち着け汐!!それをやったら本当に人殺しだぞ!!殺意、殺意引っ込めて!!」
「やかましいいい!!!しのぶさんが来る前に、あたしがお前をやってやるぅぅぅうう!!」
汐はそう叫んで後藤を振り払い、伊之助に飛び掛かろうとしたときだった。
「その必要はありませんよ、汐さん」
背後から透き通った声が聞こえ、汐は思わず動きを止めた。
恐る恐る振り返れば、そこには満面の笑みで青筋を立てているしのぶの姿があった。
「ひっ、こ、胡蝶様!!」
後藤は上ずった声を上げ、汐は勿論あれほど騒いでいた伊之助も、ぴたりと動きを止めた。
「私はこれから伊之助君と話をしますので、汐さんはお部屋に戻ってくださいね」
「・・・はい」
汐の殺意はみるみるうちに消え失せ、伊之助は汐に睨まれたときよりも明らかに怯えているように見えた。
その後、伊之助が朝までこってり絞られたことは、言うまでもなかった。