第134章 為すべきこと<壱>
同時刻。
銀糸の髪を夜風に揺らしながら、宇髄は星空を見上げた。
失った左目のあった場所には、彼の趣味がちりばめられた眼帯がある。
ふう、と小さく息を吐いたその時。
「失礼します、天元様」
背後から声がして振り返ると、そこには宇髄の妻である三人の女性が立っていた。
「おー、戻ったかお前等。おかえり」
宇髄がそう言うと、彼女たちの表情が緩んだ。
「はー!あんな遠くまで行ったの、久しぶりで疲れましたー!」
「よく言うよ、須磨。あんたは海を見てはしゃいでいただけじゃないか」
疲れたように伸びをする須磨を見て、まきをは呆れたようにそう言った。
「まきをさんだって、港町の珍しいものに目移りしてたの、知ってるんですからね!」
「うるさい!!あたしは仕事で聞き込みをしてたんだ!」
「二人ともちょっと黙って」
言い争いを始める二人を、雛鶴は鋭い一言で黙らせた。
「天元様の読み通り、元海柱・大海原玄海様の居住地から、これが見つかりました」
そう言って雛鶴が差し出したのは、一冊の古い文献だった。
「大海原家の跡地は既にありませんでしたが、彼はこのような物を海の隠し洞窟に保管していたようです」
「そうそう。あの大きな岩のある入り江、まさか隠し通路があったなんて驚きです!!」
興奮する須磨に、まきをは「あんたが転んだ拍子に偶然見つかったんだけれどね」と呟いた。
「天元様・・・」
「ああ。こいつが、大海原家とワダツミの子の謎を解く大きな手掛かりになる」
「さっそく読んでみましょうよ!!」
須磨の言葉に雛鶴は頷き、皆に見えるようにして文献を開いた。