第134章 為すべきこと<壱>
「あれ?鉄火場さんに鋼鐵塚さん!!二人とも来てたのね!!」
そこには、汚れを綺麗に落とした汐が嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「ああ汐殿。よかった。お部屋にいなかったもので、こちらで待たせていただいたんですよ」
「そうだったの、ごめんね。服と顔が汚れちゃったから着替えてたのよ」
ニコニコと笑う汐を見て、後藤は背中にうすら寒いものを感じた。
「ところで鋼鐵塚さんはともかく、どうして鉄火場さんまで?」
「以前私に預けていただいた、懐剣の研磨が終わったので持ってまいりました」
鉄火場はそう言うと、箱の中から布に包まれたものを汐に差し出した。
布をめくれば、そこにはフジツボや汚れがすっかり取れた懐剣が姿を現した。
「うわぁ・・・」
汐は感嘆の声を漏らし、炭治郎も綺麗になった懐剣に目を奪われた。
余計な装飾はないが、それがかえって懐剣本来の美しさを醸し出していた。
「ねえ、抜いてみてもいい?」
「どうぞ」
汐は恭しく懐剣を受け取ると、ゆっくりと鞘から抜き放った。
美しい銀色の刃が、汐の顔を映し出す。
その時、炭治郎はある事に気づいた。
「あれ?この懐剣、日輪刀と同じ匂いがする・・・!」
「えっ!?」
炭治郎の言葉に汐は目を見開き、反射的に顔を向けた。
「そうなんです」
鉄火場は面越しに汐を見据えると、はっきりした声色で告げた。
「この懐剣は日輪刀と同じ、猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石で出来ていたのです」
突然告げられた事象に、汐は勿論炭治郎も言葉を失うのだった。