第134章 為すべきこと<壱>
「心拍数を二百以上に・・・。体温の方は、何故三十九度なのですか?」
「はい。胡蝶さんの所で治療を受けていた際に、僕は熱を出していたんですが、体温計なるもので計ってもらった温度、三十九度が、痣の出ていたとされる間の体の熱さと同じでした」
そんな無一郎を見て、蜜璃は(そうなんだ・・・)と、どこか他人事のように聞いていた。
「チッ、そんな簡単なことでいいのかよォ」
小さく舌打ちをしながらそういう実弥に、義勇の小さな呟きが刺さる。
「これを簡単と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい」
「何だと?」
その言い草にカチンときたのか、実弥は青筋を立てながら義勇を睨みつけた。
しかし当の義勇は「何も」と表情を崩さぬまま答えた。
「では、痣の発現が柱の急務となりますね」
険悪な空気を変えるようなしのぶの声に、柱達は一斉に頷いた。
「御意。何とか致します故、お館様には御安心召されるよう、御伝え下さいませ」
「ありがとうございます」
皆を代表する悲鳴嶼の言葉に、あまねは深々と頭を下げた。
「ただ一つ。痣の訓練につきましては、皆様に御伝えしなければならないことがあります」
「何でしょうか・・・?」
蜜璃が首を傾げながら訪ねると、あまねはいったん言葉を切ると話し出した。
「もう既に痣が発現してしまった方は、選ぶことが出来ません・・・。痣が発現した方は、どなたも例外なく──・・・」