第134章 為すべきこと<壱>
「前回の戦いで、僕は毒を喰らい動けなくなりました」
皆の視線が集まる中、無一郎は静かに口を開いた。
「僕を助けてくれた一般隊士の少女が鬼に捕らわれ、それを助けようとした少年が殺されかけた時、僕は以前の記憶が戻りました。そして、その際に思い出した強すぎる怒りで、感情の収拾がつかなくなりました」
あの時の燃えるような感覚を、無一郎は思い出しながら言った。
「その時の心拍数は、二百を越えていたと思います」
落ち着き払った無一郎の声に、蜜璃は呆然としていた。
「更に体は燃えるように熱く、体温の数字は三十九度以上になっていたはずです」
「!?」
その言葉に、しのぶは驚きのあまり目を見開いた。
医学に精通している人間ならわかる、普通の人間なら、立っているのもやっとのはずの体温だ。
「そんな状態で動けますか?命にも関わりますよ」
「そうですね。だからそこが、篩に掛けられる所だと思う。そこで死ぬか、死なないか。恐らく、痣が出るものと出ない者の分かれ道です」
無一郎は頷くと、再びあまねに視線を移しながら言った。