第134章 為すべきこと<壱>
(えっと、確か台所は・・・)
後藤が辺りを見回しながら歩いていると、前方から何かがこちらに向かってくるのが見えた。
目を凝らしてみてみると、それは頭に山のようなたんこぶを乗せ、顔をへこませた善逸が、泣きながら三人娘に引きずられていく姿だった。
善逸がとりあえず生きていることに安堵しつつ、後藤が振り返ったその時だった。
「あら、後藤さんじゃない。こんなところで何してるの?」
すぐ傍から汐の声がして、後藤は小さく悲鳴を上げた。
「何よ。人の事化け物みたいに・・・」
汐はそう言って不満げに頬を膨らませた。
だが、後藤がぎょっとしたのは、汐の顔と服にいくつもついている赤い斑点だった。
「いやいやいや!!お前の顔!服!!ついてちゃヤバいもんがついてんだろ!?」
後藤が指をさしながら叫ぶと、汐は首を傾げた後自分の服を引っ張った。
「あら本当。あの時、善逸の鼻血が飛び散ったのね」
「善逸の鼻血!?」
「最初に平手打ちしたら、思いのほか威力が出ちゃったの。でもこれじゃあ炭治郎の前には出られないわね。着替えてくるわ」
汐はそう言って踵を返し、後藤は呆然とその背中を見ながら呟いた。
「竈門・・・。お前の彼女、やっぱ怖えわ」
その小さな声は、誰の耳にも届かず静かに消えていった。