第133章 光明<肆>
「ギィィャアアアアアアアアアア」
その光景を見た瞬間、善逸の口から凄まじい程の高音が放たれた。その五月蠅さに、禰豆子と遊んでいたアオイたちは、思わず耳を塞いだ。
「お、おかえり!」
善逸の顔を見て禰豆子がそう言うと、善逸は顔を真っ赤にし、目玉が零れ落ちそうなほど見開いて叫んだ。
「可愛すぎて死にそう!!」
「どうぞご自由に!!」
そんな善逸にアオイは冷ややかに突っ込むが、その言葉すら今の善逸の耳には届かなかった。
「どうしたの禰豆子ちゃん、喋ってるじゃない!俺のため?俺のためかな?俺のために頑張ったんだね!!」
善逸は禰豆子の両手を握りしめながら捲し立て、あまりの五月蠅さにきよは耳に痛みを感じたのか、塞ぎながら顔を青くさせていた。
「とても嬉しいよ!!俺たち遂に結婚かな!?」
「あっち行って下さい!!」
尚も喚く善逸をアオイは引き剥がそうとするが、善逸は禰豆子以外目にも耳にも入らない様だ。
「月明かりの下の禰豆子ちゃんも素敵だったけど、太陽の下の禰豆子ちゃんも、たまらなく素敵だよ!!素晴らしいよ!!」
「離れなさいよ!」
「結婚したら毎日寿司とうなぎ食べさせてあげるから、安心して嫁いでおいで!!」
耳がよいはずの善逸が、アオイの言葉に全く耳を貸すことなくしゃべり続ける程、彼は興奮状態に陥っていた。
だが、
「おかえり、いのすけ」
禰豆子のよく通る声が響いた瞬間、善逸はぴたりとその動きと口を止めた。アオイたちは何とも言えない表情で善逸を見つめ、禰豆子はニコニコと笑いながら善逸を見ていた。