第132章 光明<参>
鬼舞辻無惨という鬼が誕生したのは、今から千年以上前にさかのぼる。
貴族の出身だった無惨は、非常に病弱であり二十歳前には死ぬと言われていた。しかしそんな無惨を見捨てず、救いの手を差し伸べたものがいた。
それは、無惨の主治医だった善良な医者だった。
医者は少しでも無惨が生き永らえるように苦心していたが、一向に病状が改善どころか悪化していくことに無惨は腹を立てていた。
そしてある日の事。風の噂でこの医者にかかっていた貴族の娘が死んだということを聞き、ついに我慢ができなくなった無惨は、回診時に医者の頭に鉈を突き立て殺害した。
しかしその医者が処方した新薬の効果が出たのは、医者を殺してから間もなくのことだった。
それが、鬼の始祖が生まれた瞬間だった。
いかなる傷を負っても治り、病にもかからない。強靭な肉体を手に入れたと、無惨は初めは喜んだ。だが、一つ大きな問題があった。
日の光の下を歩けない。日光に当たれば死ぬということを、本能で理解していた。
その他、人の血肉が必要ということもあったが、それは人を喰えばいいという至極単純な事であり、無惨にとっては問題ですらなかった。