第132章 光明<参>
「え?」
養母が倒れる音と共に、床には真っ赤な液体が広がった。突然の事に女中は、事態を理解するのに時間を要した。
「えっ?奥様?首が・・・、どうしたんですか?どっ・・・、ええ?」
女中が必死に言葉を紡ごうとする中、少年はその惨劇を全く意に介することなく肩を震わせた。
「これでもう、青い彼岸花を探す必要もない。クククッ・・・」
無惨は愉快そうに笑うと、その顔を天井に向けた。
「永かった・・・!!しかしこの為、この為に千年、増やしたくもない同類を増やし続けたのだ」
少年の身体がメキメキと不可思議な音を立てたかと思うと、小さな体は瞬く間に膨らみ始めた。
「十二鬼月の中にすら現れなかった稀有な体質、選ばれし鬼」
そして瞬く間に少年は、成人男性の姿になり歓喜の雄たけびを上げた。
「あの娘を喰って取り込めば、私も太陽を克服できる!!」
変貌した少年、否、鬼の始祖鬼舞辻無惨の姿を見た女中は、金切り声を上げた。
「キャアアア!!人殺し!!化け物、化け物!!旦那様ァー!!」
女中はそのまま逃げようとするが、無惨が手を大きく振るとその上半身が瞬く間に吹き飛んだ。
部屋中に充満する血の匂いと汚れていく部屋。だが、今の無惨に取ってそんなことはどうでもよかった。
あの日、初めて鬼となった日からずっと待ちわびていた。この瞬間を。