第131章 光明<弐>
「汐、心臓だ!!鬼は心臓の中にいる!!」
(心臓!?)
先程よりも近づいた炭治郎の声に従い、汐は刀を心臓に向かって振り上げた。
だが、片腕を潰されたせいで力が入らない。半天狗も必死に抵抗し、汐を握り潰そうとしている。
「おおおおおおぁあ!!!」
汐が獣のような咆哮を上げ、空気がびりびりと音を立てる中。汐の青い刃と共に重ねられたのは、漆黒の刀だった。
「命をもって、罪を償え!!」
「地獄で詫び続けろ、屑が!」
二本の刀が半天狗の本体に届いた瞬間、半天狗の脳裏には微かな記憶が蘇った。
だが、それを認識する間もなく半天狗の頸は切断され、朝日を浴びて塵と消えた。
「・・・・!!」
汐は息を切らしながらも、目の前で消えていった鬼を見て僅かに安堵した。だが、先ほどの光景を思い出し、炭治郎に駆け寄った。
「炭治郎!!」
炭治郎は汐より少し離れた場所で項垂れており、身体が小刻みに震えていた。
「炭治郎!炭治郎しっかり!!」
汐が炭治郎の身体を揺さぶると、炭治郎は光を失った目で汐を見上げた。
「汐・・・」
炭治郎は抑揚のない声でそう言うと、唇を大きく震わせた。