第131章 光明<弐>
「玄弥!!」
汐が叫んだその時、半天狗の身体はそのまま重力に従って傾いた。
奇妙な浮遊感を感じて汐が振り返ると、そこは切り立った巨大な崖になっていた。
(ここは、まさかあの時の・・・!!)
刀を突き刺したままの汐は勿論、炭治郎、禰豆子も半天狗と共に崖から落ちていく。
そしてやや遅れて、落下の轟音が響き、土煙が立ち上った。
「炭治郎、禰豆子、大海原ーーー!!」
鬼化が解けた玄弥は、青い顔で三人の名を叫んだ。鬼の禰豆子はともかく、炭治郎と汐はこの高さから落ちてしまったら、ただじゃすまない。
やがて土煙が収まると、その中に蠢くものが見えた。半天狗と、禰豆子だった。
(炭治郎と大海原は何処だ!?)
この位置からは二人の姿が見えない。玄弥は歯がゆい思いで必死に目を凝らした。
一方、半天狗と共に崖下に落下した汐は、身体にかかるであろう衝撃に備えて身を固くした。
だが、衝撃はあったものの、思ったほどの強さではなかった。
不審に思って目を開ければ、自分の身体は地面から浮いており、顔を上げればそこには苦しそうに顔を歪める禰豆子の姿があった。
「禰豆子!?」
汐が声を上げると、禰豆子はほっとした様に目を細めた。落下する寸前、禰豆子が落ちてくる汐を受け止めたのだ。
だが、その衝撃で禰豆子の両足は、筋肉と骨が見える程大きく裂けてしまっていた。