第130章 光明<壱>
汐は刀を構えると、大きく息を吸った。低い地鳴りのような音が響き、刀が橙色に変化する。
「皆どいて!!禰豆子、お願い!!」
汐が踏み出すと同時に、禰豆子が術を発動した。汐の身体が真っ赤な炎に包まれ、火の玉となって木の中に突っ込む。
海の呼吸 捌ノ型――
――漁火(いさりび)!!!
炎の弾丸と化した汐の振り下ろされた剣戟が、動き続ける枝を全て焼き払い消し炭へと変えた。
「今だぁああああああ!!」
叫びと同時に炭治郎の刀にも火が燃え移り、漆黒の刃が赤く輝く。
――ヒノカミ神楽――
――炎舞!!!
炭治郎が刀を振り抜き、木の球体を斬り裂いた。
汐、禰豆子、玄弥が木が閉じないよう押さえつけ、炭治郎が止めを刺そうと振り上げた時だった。
(い、いない!!)
汐はすぐさまあたりを見回し、鬼の気配を探った。それ程遠くはない様だ。
炭治郎も匂いを辿り、鬼のいる方角を向いた。
「ヒィィ!!」
遠くで甲高い悲鳴を上げながら逃げていく、半天狗の本体が目に入った。
その瞬間、炭治郎の体内を怒りが流れるように駆け巡った。