第130章 光明<壱>
残された蜜璃は、四方八方から襲い来る竜を片っ端から切り刻んでいった。
(もっと心拍数を上げなくちゃ)
大きく息を吸い、肺に空気を大量に入れ血の循環を速くする。
(もっと早く、強く・・・、もっと!!)
鬼は本体のある方向へ向かった汐達を見て、僅かに焦りを見せた。
再生力を落とす剣術を使う炭治郎、人と共に戦う鬼禰豆子、致命傷を与えても絶命しない玄弥、そして、人とは思えない技を持つワダツミの子、汐。
本体を落とされることを危惧した鬼は、汐達の方向へ追っ手を放とうとしたときだった。
蜜璃が瞬時に飛び掛かり、竜の頭をバラバラに斬り裂いた。しかも先ほどよりも速度が増しているようだった。
(先ほどよりも動きが速い!何をした!?何をしている!?)
鬼はすぐさま蜜璃に視線を向け、そして大きく目を見開いた。
蜜璃の左首筋に、桃色の奇妙な痣が浮き出していた。
(痣・・・!?初めから在ったか?)
それを見た鬼はある事に気づいた。酷似していたのだ。鬼の持つ文様に。
鬼は太古を二度同時に打ち鳴らし、雷と竜を同時に差し向けた。しかし蜜璃は、それすらも容易に斬り裂き、舞うように飛び回る。
(不愉快極まれり!!)
鬼は不快感を隠すことなく、蜜璃を睨みつけた。
(この小娘のせいで、童共の方へ石竜子をやれぬ!!憎たらしい!!)
だが、蜜璃と鬼との間には絶対的な相違点があった。
それは、蜜璃は人間で、こちらは鬼であるということ。
鬼には体力の限界がないということ。
(必ず体力が続かなくなる。人間は、必ず!!)