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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第16章 鬼と人と<壱>


「・・・いやはや、みっともない姿をお見せしてすみません」

男ははっきりとした口調でそう言い、汐に視線を向ける。心なしか、視点もしっかりしているように見える。

「これくらいなんでもないわ。ところで、さっき言ってたこと覚えてる?あんた、あたしのことを見て【鬼狩り様】って言ってたけど」

汐の言葉に男は肩を大きく震わせる。そして、目を見開き口を開いた。

「そうだ。私の孫娘が鬼めに連れ去られてしまったのです!どうか、どうかお救いを・・・」
「落ち着いて。まずは詳しく話してちょうだい。何があったのか」

汐に促され、男はぽつりぽつりと語りだした。

「私の名は菊松右衛門(うえもん)と申します。この地で息子夫婦と共に人形職を営んでおりました」
男、右衛門は息子夫婦で人形職人をしていたが、孫娘が生まれてからは夫婦とは疎遠気味になってしまっていた。
だが、孫娘だけは毎日のように祖父である彼の元に遊びに来ていたという。

「あの子は私の作る人形が大好きだと、毎日のように言っておりました。そして自分もそれを真似て、余った布切れなどで人形を作ることをしていたのです。その時間が、私は何よりも幸せだった」

右衛門はそういって、懐かしむかのように目を細める。だが、次の瞬間には、その顔は苦悶に満ちたものに変わった。

「だのに!その幸せは突然奪われた!あの、あの鬼のせいで!」
右衛門はそう叫んだあと、激しくせき込みだす。汐は慌てて彼の背中をさすり、落ち着かせる。

「その日は珍しく孫娘が来なかったため、私も久しぶりに息子夫婦の家を訪ねたのです。すると、そこには、そこには・・・」

おびただしい量の飛び散った血痕と、その血の海に沈む息子夫婦。そして、その中心でうなり声をあげている異形のモノ。その手には、孫娘がいつも大事にしている人形が握られていた。
悲鳴を上げて後ずさる彼に、それは飛びつき彼の腕を食いちぎった。そしてそれはそのまま、どこかへと去っていった。
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