第129章 強くなれる理由<肆>
(重圧歌も暗示の一つ。ただ、束縛歌と違って同じ相手には一度しか使えない。でも、束縛歌は上弦の鬼には効果が薄い。なら・・・!!)
海の呼吸・伍ノ型――
――水泡包!!
汐は竜に飛び乗ると、型を使って鬼の目を逸らし一気に詰め寄った。狙いは頸を斬るのではない。束縛歌を至近距離で流し、動きを少しでも長く止めるためだ。
(鬼の動きを止めれば、炭治郎が本体を捜す時間を稼げる!)
汐は六十六尺の距離を保ちながら、鬼の元へと向かっていた。
ところが
「愚かな」
鬼の口が動いた瞬間、汐の死角から龍の口が襲い掛かりその大口で汐の身体ごと飲み込んでしまった。
「え・・・」
何が起こったのか分からない炭治郎の口から、声が漏れた。その一瞬をつき、木の龍の口が接ぎ木のように伸び、汐同様炭治郎を飲み込んでしまった。
「うーーー!!」
腕を挟まれたままの禰豆子が、二人の惨状を見て空気を裂くような唸り声をあげた。
玄弥も必死で、胴に絡まった木を外そうと必死にもがく。