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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第16章 鬼と人と<壱>


「らっしゃい。おや?あんたここらじゃ見かけない人だね。旅行者かい?」
「う~ん、まあそんなとこ。探し物をしてここまで来たの」
「へぇ、こんな辺鄙な場所までよく来たもんだ。で、どれにするんだい?」

汐はつくねと鳥皮を一本ずつ頼むと、その場で舌鼓を打つ。絶妙に焼かれた鶏肉が、汐の味覚を刺激する。

だが、汐の本当の目的は観光ではない。早く鬼の情報を集めなければならないが、鬼殺隊は政府から直接認められていない組織。
当然、鬼の存在も広くは認知されてはいない。もしも直接そのようなことを聞けば、間違いなく変に思われるだろう。
どうしようか、と思ったその矢先だった。

――にんぎょうにんぎょうつくりましょう
あたまをつけておててをつけて
あんよもふたつつけましょう
きれいなきものもきせましょう
きれいなきれいなおにんぎょう
あなただけのおにんぎょう

どこからか歌のようなものが聞こえ、汐は思わず目を向ける。すると、通りの向こうから一人の老人が歌を口ずさみながらふらふらと歩いてくるのが見えた。

白髪だらけの頭に、みすぼらしい着物。そして、右腕があるはずの場所には、袂だけがゆらゆらと揺れている。隻腕の男だった。
男は焦点の定まらないまなざしをあちこちに向けながら、そのまま歩き去っていった。

「あれは・・・?」
汐がもっとよく見ようと立ち上がると、店主は渋い顔をしながらそれを制した。

「かかわらないほうがいいぜ、旅人さん。ありゃあこの通りの奥に住む【菊屋】のおやじだ」
「菊屋のおやじ?」

汐がオウム返しに聞き返すと、店主はそのまま忌々しそうに言った。
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