第128章 強くなれる理由<参>
夜が明け始めた外に出て初めて、家族を襲ったのが母親だと気づいたとき。
最愛の母親を手にかけて打ちのめされていた時に、必死で守った弟から罵倒された彼は、どんな気持ちだったのだろう。
――一緒に守ろうって、約束したばかりだったのに・・・
『玄弥、家族は俺たち二人で守ろう』
それは父親の死後、実弥と二人で買い出しに来ていた時だった。
『親父は刺されて死んじまった。あんなのは別に、いない方が清々するけど、親父がいねぇとなると皆心細いだろうから。これからは、俺とお前でお袋と弟たちを守るんだ。いいな?』
まるで自分に言い聞かせるようにう言う実弥の言葉を、玄弥は少し訂正した。
『これからは、じゃなくて、これからも、だよな』
玄弥の言葉に実弥は少し驚いた顔をしたが、飛び切りの優しい笑顔を弟に向けた。
見事な満月がかかった、綺麗な夜だった・・・