第127章 強くなれる理由<弐>
「あたしも加勢するわ!!」
汐は無一郎の傍に駆け寄ると、玉壺に向かって刀を構えた。
だが、無一郎はそんな汐を見てこう言った。
「いや、こいつは俺がやる。君はすぐにここから離れて」
「えっ!?」
汐は思わず無一郎の方を向くと、無一郎は玉壺を見据えたまま動かない。
汐は何かを言いかけたが、自分が足手纏いだということを察し口をつぐんだ。
「そ、そうね。あんたの事は心配だけど、あたしがいると邪魔よね」
「違う、そうじゃない」
無一郎は視線を動かさないまま、言葉をつづけた。
「君には炭治郎の方達の加勢を頼みたいんだ。上弦の鬼はこいつだけじゃない。俺はともかく、炭治郎達には君の力が必要だ」
そういう無一郎の目には、最初に出会った頃の冷徹さは微塵もなかった。
「そうね、あんたの言う通りだわ。でもこれだけは言わせて」
――死なないで。
汐の温かい声は、無一郎の耳を優しく包み込み身体に熱を持たせた。
その感覚に無一郎は、汐が炭治郎や皆に慕われている訳が何となく分かったような気がした。
「あんたには言いたいことが山ほどあるんだから、死んだら承知しないわよ!」
汐はそういうと、刀を納め森の奥へ駆け出した。