第127章 強くなれる理由<弐>
「逃がすか、ワダツミの子!!」
そんな汐の後を追うように蛸足が再び向かうが、そうはさせまいと無一郎が動いた。
(ありがとう、汐。君の言葉、忘れないよ)
――霞の呼吸 伍ノ型――
―─霞雲の海
無一郎の決意に満ちた刃は、道を切り開く様に蛸足をバラバラに斬り裂いた。
そのまま無一郎の白刃は、玉壺の頸を穿とうとしたが、再び高速移動でその攻撃を躱した。
「素早いみじん切りだが、壺の高速移動にはついて来れないようだな」
玉壺は嘲るように言い、それに対して無一郎も言い返した。
「そうかな?」
「何?」
「随分、感覚が鈍いみたいだね。何百年も生きてるからだよ」
無一郎がそう言った瞬間、玉壺の頸から鮮血が吹き出した。
「次は斬るから」
無一郎は刀を向けながら、凛とした声で言い放った。
「お前のくだらない壺遊びに、いつまでも付き合ってられないし」
そんな彼に玉壺は傷を押さえつつ、顔中に青筋を浮かべながら返した。
「・・・舐めるなよ、小僧」
その表情には無一郎に対しての、確かな殺意が現れていた。