第127章 強くなれる理由<弐>
「はあ!?お前に言われたくねーわよ!!鏡で自分の面を見てから言いやれ!!」
汐はそう叫ぶと、蛸足に捉えられている無一郎たちを見て顔を青くした。
その隙を玉壺は見逃さず、汐に向かって壺の口を向けた時だった。
突然、無一郎たちを絡めていた蛸足に線が入り、瞬く間に細切れにされたのだ。
これに汐は勿論、玉壺も驚き固まった。
そのまま無一郎たちは重力に従い落下し、無一郎は着地後ゆっくりと立ち上がった。
その手には、鞘から抜き放たれた霞の様に真っ白な刀があった。
「俺のために刀を作ってくれて、ありがとう。鉄穴森さん」
無一郎は玉壺を見据えたまま、鉄穴森に感謝の言葉を伝えた。
「いやいや、私は・・・、あなたの最初の刀鍛冶の書き付け通りに作っただけで・・・」
「そうだったね」
無一郎は優しい声色でそう言った。
「鉄井戸さんが最初に刀を作ってくれた。心臓の病気で死んでしまった・・・」
無一郎の脳裏に、刀を作ってくれた鍛冶師の姿が蘇った。
余命僅かでありながらも、最後まで自分の心配をしてくれていた人。
(鉄井戸さん、ごめん。心配かけたなぁ。だけど、俺はもう大丈夫だよ)
無一郎は心の中で鉄井戸に感謝と謝罪の言葉を呟き、目の前の敵を見据えた。