第127章 強くなれる理由<弐>
「ヒョヒョッ、どうだこの蛸の肉の弾力は。これは斬れまい」
玉壺は先ほどの鬱憤を晴らすがごとく、得意げに笑みを浮かべていた。
ふと視線を向ければ、先ほどの衝撃で飛ばされた鋼鐵塚が、砥石を拾って刀を研ぎ始めていた。
その姿に、流石の玉壺も気味悪がった。
(まだ刀を研いでいる。馬鹿か?まともではない・・・)
しかし玉壺はすぐに頭を切り替えると、先ほど捕らえた無一郎たちに視線を向けた、その時だった。
――海の呼吸 壱ノ型――
――潮飛沫!!
突然煌めいた群青色の刃が、玉壺に向かって振り抜かれようとしていた。だが、玉壺は再びその攻撃を避け移動していた。
「ちっ、ちょこまかと・・・!」
刀を振るった主、汐は、苦々し気に舌打ちをしながら玉壺の居場所を探していた。
(な、あ、あれは・・・、ワダツミの子!?)
玉壺は自分に斬りかかってきた者の姿を見て、顔中から汗を吹き出しながら狼狽えた。
(水獄鉢を抜けている!!何故だ、どうやって!!いや、それよりも、あの子娘を捕らえたのは少なくとも十分以上も前のはず。それ程呼吸を止められて生きているなどあり得ぬ・・・。ま、まさか・・・!!)
「貴様ァ!!さては人間ではないな!?」
玉壺は木の影に置いてあった壺から身を乗り出すと、汐を指さして叫んだ。