第127章 強くなれる理由<弐>
(いやいやいや、それよりも、何を涼しい顔して出て来てるんだ。私の攻撃でお前は体が麻痺してるはずだろうが!)
玉壺は先ほど汐を閉じ込めた時、まともに動けなくなる様子を確かに見ていた。しかし目の前の無一郎は、先ほどよりも尚早い動きで刀を振るった。
その肩からは、証であるかのように鮮血が流れ出ていた。
無一郎はしっかりと玉壺を見据えると、足に力を込め踏み出した。すると玉壺は再び壺を取り出し、口を無一郎に向けた。
――蛸壺地獄!!
壺の中から人の胴ほどの太さの蛸足が這い出し、無一郎の刀を阻んだ。
蛸足の弾力が刃こぼれした刀を押し返し、無一郎の身体にも絡みつく。
「時透殿!!」
鉄穴森は気を失った鉄火場を庇いながら、手にしていた刀を無一郎に渡そうとした。
しかし飛び出してきた蛸足に絡めとられ、無一郎の刀はへし折られてしまった。
蛸足は勢いを衰えさせずに暴れ回り、遂には小屋を破壊するほどまでに膨れ上がっていた。