第127章 強くなれる理由<弐>
時は少しさかのぼり
玉壺は汐達を戦闘不能にした後、鋼鐵塚のいる小屋へ入り込んだ。
すると鉄穴森が鉈を手に、玉壺に斬りかかってきた。
だが、玉壺は鉄穴森をいとも簡単に鉈ごと切り裂いた。
「こんなあばら家を必死に守ってどうするのだ」
悲鳴を上げて倒れ伏す鉄穴森をしり目に、玉壺は嘲るように言った。
「もしや、ここに里長でも居るわけではあるまいな」
それはないだろうと玉壺は口元を歪ませて笑うが、不意に鉄を研ぐ音が聞こえてきた。
「んんん?」
玉壺が視線を向ければ、そこには一心不乱に刀を研ぐ一人の男の背中があった。
「すごい鉄だ。すごい刀だ。なんという技術・・・、素晴らしい」
男、鋼鐵塚は背後に危険が迫っていることにも意を介さず、ぶつぶつと呟きながら手を動かしていた。
(若い人間だな。四十手前の肉体、長とは思えぬ)
玉壺は鼻を鳴らすと、鋼鐵塚の背中に向かって口を開いた。