第126章 強くなれる理由<壱>
『・・・神、様、仏・・・様・・・どうか・・・、どうか・・・弟だけは・・・助けてください・・・』
いつもとはかけ離れた弱弱しく小さな声に、無一郎の体が震えた。
『弟は・・・俺と・・・違う・・・。心の、優しい・・・子です・・・。人の・・・役に・・・立ちたいと・・・言うのを・・・俺が・・・邪魔した・・・』
今まで聞いたことのない、優しく悲しい言葉が、無一郎の心を突き刺した。
『悪いのは・・・俺だけ・・・です。バチを当てるなら・・・俺だけに・・・してください・・・』
段々とかすれて行く声に、無一郎の目から大粒の涙があふれ出した。
兄の気持ちに気づけなかった自分、兄を助けられなかった自分。いろいろな感情が渦巻き、無一郎は涙を流しながら、必死で兄の手を掴んだ。
『わかって・・・いたんだ・・・本当は・・・』
有一郎が事切れる寸前、無一郎は確かに彼の声を、言葉を聞いた。
『無一郎の、無は・・・』
――“無限”の“無”なんだ・・・