第126章 強くなれる理由<壱>
「汐」
汐の容体がだいぶ落ち着いてきた頃。無一郎は静かに名を呼んだ。
汐が顔を上げると、無一郎は振り返らずに口を開いた。
「小鉄君を頼む」
「え?」
汐が何かを言う前に、無一郎はすっと音もなく立ち上がった。
「あの鬼は僕が斬る。後は任せて」
無一郎がそう言った時、一陣の風が吹き彼の髪を大きく揺らした。
その時、汐は大きく目を見開いた。
無一郎の頬に、不思議な痣のような文様が浮き出ていた。
「あんた・・・、それ・・・」
汐が言葉を発する前に、無一郎は力強く地面を蹴ると、鋼鐵塚のいる小屋に向かって走り出した。