第126章 強くなれる理由<壱>
『凄いね、僕たち剣士の子孫なんだって』
その夜、無一郎は興奮した様子で野菜を切る有一郎に話しかけた。
『しかも、一番最初の呼吸っていうのを使う凄い人の子孫で・・・』
『知ったことじゃない。さっさと米を研げよ』
そんな弟の言葉を遮ると、有一郎は淡々と言いながら手を動かした。
『ねぇ、剣士になろうよ。鬼に苦しめられてる人たちを助けてあげようよ』
無一郎は朗らかな笑顔で兄に訴えた。
『僕たちならきっと・・・』
だが、有一郎はその言葉を聞きたくないと言わんばかりに、包丁を叩きつけるようにして野菜を切った。
一度、二度、三度、四度・・・。四度目に振り下ろした時の勢いで、野菜の一部がまな板からころりと落ちた。
『お前に何が出来るって言うんだよ!!』
有一郎の雷のような大声に、無一郎はびくりと体を震わせた。
『米も一人で炊けないような奴が剣士になる?馬鹿も休み休み言えよ!本当にお前は父さんと母さんそっくりだな!!』
砲弾のような有一郎の言葉に、無一郎の顔から笑顔が消えていく。
『楽観的過ぎるんだよ、どういう頭してるんだ。具合が悪いのを言わないで、働いて体を壊した母さんも、嵐の中 薬草なんか採りに行った父さんも。あんなに止めたのに・・・!!母さんも、休んでって何度も言ったのに!!』
有一郎は悔しさを吐き出すように叫びながら、包丁の柄を震えるほど強く握った。