第126章 強くなれる理由<壱>
『離れろ』
(!?)
何処からか声が聞こえた気がして、無一郎は倒れている小鉄を抱えてその場から飛びのいた。
それとほぼ同時に、汐の入った水球が突然破裂した。
――ウタカタ 伍ノ旋律・転調――
――爆塵歌(ばくじんか)!!!
水球が破裂するのと同時に、化け物も吹き飛ばされ木に叩きつけられて呻いた。
その隙に、無一郎は化け物を斬り捨てると汐達の元に駆け寄った。
「汐!大丈夫!?」
「ガハッ、ゲホッゲホッ、ゲェッ・・・!」
汐は激しくせき込みながら、口の中の水を吐き出し蹲っていた。
無一郎は焦る気持ちを抑え、汐の背中を優しくさすった。
その光景の中、無一郎は失った過去の事を思い出していた。
(思い出したよ、炭治郎。僕の父は、君と同じ赤い瞳の人だった)
それは、杣人という木を切る仕事をしていた父の記憶。息子である自分も、木を切る手伝いをしていた記憶。
『杓子定規に物を考えてはいけないよ、無一郎。確固たる自分を取り戻した時、君はもっと強くなれる』
そして、病が進行した輝哉の顔。失った記憶が次々と蘇ってきていた。