第126章 強くなれる理由<壱>
一方、その光景を見ていた無一郎は、動かない自分の身体に怒りが沸き上がってくるのを感じた。
目の前で自分が助け、助けられた相手が傷つき、死に近づいていく。
――この光景を、無一郎は以前にも見たような気がした。
大切な誰かが、自分の目の前で奪われる理不尽さと、怒りを。
無一郎は刺さった針を抜き捨てると、足に力を込めた。次に胴体に、腕に、指先に、頭に。
『人のためにすることは、巡り巡って自分のためになる』
炭治郎に似た誰かは、再び優しく言葉を投げかけた。
『そして人は、誰かのために信じられないような力を出せる生き物なんだよ。無一郎』
無一郎は頷くと、目の前の光景をしっかりを見据えた。
(あの子達を死なせてはならない。必要不必要だからじゃない。鬼から人を助けるのが、鬼殺隊だから・・・!!)
無一郎は痺れが残る身体を叱咤し、小鉄に止めを刺そうとしている化け物に斬りかかろうとした。
その時だった。