第126章 強くなれる理由<壱>
(・・・!!!)
その光景に汐の顔から血の気が引き、身体の熱は失われ、目の前も暗くなってきた。
喉を締められるような苦しさも、段々と薄くなっていくようだった。
(許さない)
汐は薄れて行く意識の中、小鉄を傷つけられた怒りを殺意に変え、意識を必死に手繰り寄せた。
あの時の感覚を思い出すように。
すると霞む視界の中、汐の目の前に一輪の花が現れた。
葉も茎もない、八重咲の百合に似た青白く光る半透明の不思議な花。
その瞬間、汐の中にあの時の感覚がはっきりと蘇ってきた。
汐は意識を集中させ、全身に力を入れる。頭のてっぺんからつま先まで、神経を研ぎ澄ませるように。
すると、汐の周りの水が震えだし、小さな泡が発生した。泡の数は瞬く間に増え、やがて汐の全身を包み込んだ。