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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第16章 鬼と人と<壱>


「大丈夫!?けがはない!?」
「あ、ああ。俺は大丈夫だ。けど、積んでいた荷物が崩れちまった・・・」
汐が周りを見回すと、数はそれほど多くはないものの、結構な大きさがある。おそらく積み方を誤ったため、振動で崩れてしまったのだろう。

「まいったなぁ。この先の町まで運ばなきゃならねえのに、一人で積みなおしてたら日が暮れちまう・・・」
男は困ったようにぶつぶつと呟く。そんな彼に、汐は間髪入れずに口を開いた。

「あたしが積みなおすのを手伝うよ!」
「ええ!?」
男は驚いて汐の顔をまじまじと見つめた。

「無茶だ。荷物は多くはないがかなりの重さがある。お前さんみたいな子供に運べるわけがない」
「大丈夫。こう見えてもあたし、力持ちなのよ。いいから黙って任せて」

そう言って汐は散らばった荷物の一つの前に立つ。試しにつかんでみると、なるほど、結構な重さだ。
普通の少女だったらどんなに力を込めても持ち上げることすら不可能だろう。しかし、汐は普通の少女ではない。
鬼と戦う力を持つ、鬼殺の剣士だ。

――全集中・・・!

汐は息を強く吸い、意識を集中させる。そして荷物に手をかけると、一気に引き上げた。
決して軽くなかった荷物が、地面から浮き上がる。そのあり得ない光景に、男は呆然と汐を見つめていた。
そのまま汐は荷物を次々に持ち上げ、荷台に綺麗に乗せる。それから男と一緒に縄できちんと固定した。

「こりゃあ驚いた。あんた、本当に力持ちなんだなぁ。おかげで助かったよありがとう」
「いいのよ別に。それよりあたし、これから南東にある町に行きたいんだけれど、あとどれくらいで着く?」
汐が訪ねると、男は驚いた顔で首を横に振った。

「ここから町まではかなりの距離があるぞ。歩いてなんかいったら明日になっちまう」
「えー!?そんなに遠いの!?」
思わぬ答えに汐は思わず声を上げてしまう。距離があることは覚悟していたものの、流石に日にちを跨ぐとは思いもしなかったのだ。
困った顔をする汐を見て、男は少し考えた後口を開いた。

「お前さんがよければ乗せて行ってやろうか?歩けば一日かかるが、馬車ならその半分で着くからな」
「え?いいの?」
「ああいいとも。ちょうど同じ方向だからな。荷物運びを手伝ってくれた礼さ」

男は気前よく親指を立て、真白な歯を見せてにっこりと笑った。
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