第126章 強くなれる理由<壱>
(小鉄!?)
汐は、水越しに見える小鉄の姿を見て目を見開いた。小鉄は必死に右手の出刃包丁を、何度も何度も振り下ろしていた。
「死なせない!!頑張って、汐さん!!絶対に出すから!!俺が、助けるから!!」
小鉄は涙を流しながら、何度も何度も包丁を振り下ろした。しかし鬼の血鬼術で出来た水球は、刃を弾くだけでびくともしない。
(馬鹿っ、隠れてって言ったのに、何でここに居るのよ・・・!)
動けない歯がゆさと息苦しさに、汐は大きく顔を歪ませたが、不意に小鉄の背後で蠢くものがあった。
それは、ひれの部分が刃の様になっている、魚の化け物だった。
(小鉄、後ろよ!!気づいて・・・!!)
しかし汐の願いも虚しく、化け物はその刃を容赦なく小鉄に振るった。
「ギャッ!!痛っ・・・!」
短い悲鳴と共に、真っ赤な雫が汐の目の前を染めていった。
「うわぁ血だ!!」
小鉄は出血に驚き、その場から思わず後ずさった。しかし魚の化け物は、そんな彼の鳩尾に刃を突き刺した。