第125章 招かれざる客<肆>
(せめて、あの子だけは助けたかったな。あの子の力はきっとこの先必要だったのに。でも、もう駄目だ。終わった)
『どうして、そう思うんだ?』
「え?」
誰かの声が聞こえた気がして、無一郎は頭を上げた。すると目の前に、その場にいないはずの炭治郎が立っていた。
(炭治郎?どうして・・・いや、ちょっと待て)
『先のことなんて、誰にも分からないのに』
(違う。炭治郎にはこんなことを言われてない。言ったのは、誰?)
しかし考える間もなく、無一郎の視界は段々と霞を帯びてきた。しかしそれでも、炭治郎に似た誰かは彼に語り続けた。
『自分の終わりを、自分で決めたらだめだ』
(君からそんなこと言われてないよ)
『絶対どうにかなる。必ず誰かが助けてくれる』
(何それ、結局人任せなの?一番駄目だろう、そんなの)
炭治郎に似た誰かの言葉を無一郎は否定し続けるが、それでも彼は口を止めなかった。
優しい声色で、語り続けた。
『一人でできることなんて、ほんのこれっぽっちだよ。だから人は、力を合わせて頑張るんだ』
(ううん、違うよ)
無一郎は小さく首を振って、ぎゅっと目を閉じた。