第125章 招かれざる客<肆>
(なんで・・・なんで・・・?)
必死に抵抗する汐を見て、無一郎の心がざわめいた。
(なんで僕を、俺を庇ったんだ・・・?なんで・・・)
無一郎は再び斬りかかろうとしたが、先程の毒のせいか、身体が痺れて全くいうことを聞かない。
だが、今自分が動かなければ汐が危ない。いや、汐だけでなく鉄火場たちの命も・・・。
動きが止まった無一郎に、玉壺は好機と言わんばかりに水を放とうとした。
しかし先程かわされ続けていたせいか、水は壺から流れ出ることはなかった。
(むっ、少し遊びすぎたか・・・?だが、まあいい。柱の小僧はもう動けん上に、小娘の歌も呼吸も封じた)
歯を食いしばる無一郎と水球の中の汐を見て、玉壺は高らかに笑った。
「里を壊滅させれば、鬼狩り共には大打撃。鬼狩りを弱体化させれば産屋敷の頸もすぐそこだ、ヒョッヒョッ」
勝ち誇ったように笑う玉壺の顔を、汐は腹立たしげに睨み付けた。
(こいつは、この生ごみ野郎は絶対に生かしておいちゃいけない・・・!!)
しかし汐を取り巻く水は、刀では切れそうもない上ウタカタを放つための空気の余裕もない。
いくら人より息を長く止めることが出来ても、呼吸をしなければ生命活動を持続することは出来ない。
このままなにもしなければ、汐に待っているのは死のみだ。