第125章 招かれざる客<肆>
「汐!」
無一郎は思わず汐の名前を呼び、すぐに身体を起こして斬りかかろうとした。
だが玉壺は、あろうことか汐の後ろに隠れ、無一郎の刀が一瞬止まった隙に、再び水を浴びせた。
しかし無一郎も、一度見た技であるせいか、あふれでる水を避け、再び斬りかかる。
その度に玉壺は針を浴びせ、逃げ回ることを繰り返した。
「ヒョッヒョッ・・・、柱の小僧を捕らえるつもりだったが、これもまたいい・・・。窒息死は乙なものだ、美しい」
玉壺は、水球の中の汐をまじまじと見つめながら、うっとりと言葉を紡いだ。
「鬼狩りの最大の武器である呼吸を止めた。もがき苦しんで歪む顔を想像すると堪らない、ヒョヒョッ」
玉壺は嬉しそうに目を細めていたが、汐の青い髪を見て大きく目を見開いた。
「青い髪・・・。そうか!貴様が例の歌姫、ワダツミの子・・・!いい、これはいい!!この娘を使えば、更に素晴らしいものが・・・」
玉壺は興奮しながら汐の周りをぐるぐると動き、汐は何とか脱出しようと刀を振ってみた。
しかし水球はぐにゃりとたわみ、斬ることはできなかった。