第16章 鬼と人と<壱>
暗く広い部屋の中に、布がこすれるような音が小さく響く。
部屋の真ん中では一つの影が、何やら一心不乱に手を動かしている。
その影が手にしているのは、さび付いた一本の縫い針。そしてその針の穴には、血のように真っ赤な糸が通されている。
影はそのまま機械の様に手を動かし続ける。何度も、何度も、針を突き刺す。
突き刺すたびに、ぷつりという小さい音が何度も何度も響く。そしてそのたびに滴り落ちる、赤黒い雫――
――にんぎょうにんぎょうつくりましょう
あたまをつけておててをつけて
あんよもふたつつけましょう
きれいなきものもきせましょう
きれいなきれいなおにんぎょう
わたしだけのおにんぎょう