第15章 幕間その弐
その口から出てきたのは、お世辞にも歌とは言えない程に随分とへたくそなものだった。しかも心なしか、彼の顔も音程と同じように歪んでいる気がする。
その歌のようなものはしばらく続き、やがて唐突に終わりを迎える。呆然と聞いていた汐だったが、
「ブフッ!!」
思い切り噴き出すと、火が付いたように笑い出した。
「あははははは!!なにそれ、おっかしい!いっひひひひひ!!」
腹を抱えて笑い出す汐に、兄妹は呆然と彼女を見つめる。それをしり目に、汐は涙まで流しながら笑い転げた。
やがてひとしきり笑った後、我に返った汐は炭治郎に謝った。
「ごめん。笑ったりして。だけど、炭治郎の、ププッ、歌が、ククッ、あまりにも、その、個性的だった、ウヒヒ、だったから・・・」
どうやらまだ余韻が残っているのか、ところどころ笑いを挟みながら汐は言葉を紡ぐ。
普通の人間ならばここで怒るか困るかだろうが、炭治郎は違った。
「よかった、汐が笑ってくれて。俺、汐がそんな風に笑った顔を見たのは初めてだったからすごくうれしい」
炭治郎の言葉に、汐の頬がわずかに赤く染まる。彼の口から出てくる言葉は、時折ものすごい破壊力を持つからたまったものじゃない。
「・・・あんた、そういうことを平気で言うの、ちょっとまずいよ」
「え?俺、汐の気を悪くすることを言ったのか!?」
「そうじゃなくて・・・、あーもう!!いいわよ!この話はおしまい!!」
顔を赤くしながら、汐は岩を降りて小屋に向かう。残された二人は首をかしげたが、やがて汐を追って小屋の中へと戻っていった。
三人の星空の音楽会は、こうして幕を閉じたのだった。