第124章 招かれざる客<参>
「どうか助けてください!少しでも手を止めてしまうともうダメなんです!!どうか、どうか・・・!!」
小鉄は服が汚れるのも構わずその場に突っ伏し、二人に向かって頭を下げた。
それを見た無一郎は、困惑した表情を浮かべる。
「ちょっと、男がむやみに土下座なんかするもんじゃないわよ。安心して!あたし達はそのために来たんだから」
「・・・え?」
汐の言葉に、無一郎は思わず顔を向けた。そのとき、彼の頭に小さな痛みが走った。
『君は必ず自分を取り戻せる、無一郎』
それはかつて、自分が大きな傷を負い床に臥せっていた時。
見舞いに訪れていた輝哉に言われた言葉だった。
『混乱しているだろうが、今はとにかく生きることだけ考えなさい。生きてさえいればどうにかなる』
それはとても優しく、温かな言葉。
『失った記憶は必ず戻る。心配はいらない。きっかけを見落とさないことだ。些細なことが始まりとなり、君の頭の中の霞を、鮮やかに晴らしてくれるよ』
「ちょっと、大丈夫?」
急に黙ってしまった無一郎を心配して、汐は声を掛けた。すると無一郎は座り込んだままの小鉄の手を引くと、そのままひょいと片腕で担いでしまった。
「へぁっ!?」
間抜けな声を出す小鉄をそのままに、無一郎は汐の方を向いていった。
「先に行くよ」
無一郎はそれだけを言うと、そのまま小鉄と共に走り出してしまった。