第124章 招かれざる客<参>
「君、邪魔だからさっさと逃げてくれない?」
声の主、時透無一郎は刀を構えたまま、後ろで震える小鉄に言い放った。
「小鉄君、こっちです!」
物陰から鉄火場が小鉄に向かって手を伸ばし、小鉄は頷くと立ち上がって走り出した。
無一郎はそれを一瞥すると、呆然としている汐に顔を向けた。
「ねえ、ぼさっとしてる暇あるの?君が発端なんだから、最後まで油断しないでよ」
そういう無一郎の"目"には、先ほどの冷徹さは消え失せていた。
「そうね。助かったわ、ありがとう。でも奴さん、まだやる気みたい」
汐の言う通り、真っ二つに斬ったはずの化け物は崩れずに再生していた。
「あいつは壺を壊せば倒せるみたい。あたしが注意を引くから・・・」
「いい。一人で十分。それよりも周りを警戒して。まだいくつか気配がする」
無一郎はそういうと、目にもとまらぬ速さで化け物の壺を斬り裂いた。
汐は思わず唖然としそうになるが、無一郎の言う通りに周りを警戒した。
すると周りからぞろぞろと化け物たちが集まりだした。一匹一匹は強くないが、数が多い。
「ええい、面倒くさい!!みんなまとめて吹き飛ばしてやる!」
――ウタカタ・伍ノ旋律――
――爆砕歌!!!
汐の歌が広範囲に響き、壺ごと化け物を吹き飛ばした。それを見た無一郎は目を見開き、汐を凝視していた。