第124章 招かれざる客<参>
(いかにも怪しい壺・・・、もしかして・・・っ!!)
「小鉄、ちょっとこれ貸して」
汐は小鉄から半ば強引に刀を奪い取ると、両腕を振り下ろそうとしている怪物の懐に潜り込んだ。
海の呼吸 漆ノ型――
――鮫牙(こうが)!!!
汐は刀を挟み込むように怪物の胴体に突き刺すと、身体を大きく捻って怪物をねじり切った。まるで獲物を食いちぎる鮫のように。
(前に見た、伊之助の獣の呼吸を参考に思いついた技だけど、うまく決まったわ!)
怪物の身体が大きく傾き壺が露になると、汐は壺に向かって刀を振り下ろした。
壺が砕けると同時に、怪物は形を失い崩れていった。
「大丈夫!?怪我は・・・」
「汐さん、後ろです!!」
汐が言い終わる前に小鉄が叫んだ。振り返れば、汐の死角からもう一匹の化け物が鋭い爪を振り下ろそうとしていた。
間に合わない!小鉄が悲鳴を上げ、汐が固く目をつぶったその時。
ふわりと柔らかな風が吹いた。汐が目を開くと、そこには風になびく長い髪と、真っ二つに両断された化け物の姿があった。