第124章 招かれざる客<参>
そのまま汐は、鉄火場を連れて森の中を駆け抜けていた。鉄火場の手から伝わる震えが、不安と恐怖を汐にも伝えていた。
それを感じた汐は、絶対に鬼達の思い通りになどさせないと胸に決意を抱いた。
やがて少し進むと、少し前に誰かが走っているのが見えた。
(あれは、隊服!そしてあの髪の色は・・・)
「あんたっ、時透無一郎!!」
汐が叫ぶように呼ぶと、人影の主時透無一郎は汐の方に顔を向けた。
「よかった!あんたも無事だったのね!」
汐は無一郎の隣を走りながら嬉しそうにそう言った。そんな汐に無一郎は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに表情を戻した。
「あんたなら気づいているかもしれないけれど、この辺に別の鬼の気配がするわ!多分、さっきのヒトデ爺とは別の――」
汐がそう言いかけた時、少し後ろの方で叫び声が聞こえてきた。その声に、汐は聞き覚えがあった。
「あの声は・・・、小鉄!?」
思わず振り返れば、魚のような怪物に襲われている小鉄の姿があった。
汐は足を止め、そちらに向かおうと顔を向けた。だが、それを無一郎は静かに制止した。